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【社外参謀’s File #10】 とにかく、社長の話をじっくり聞く。独自の強みを引き出して中小企業を助けたい
中小企業と心をひとつに、外から支える「社外参謀」。JCFに所属する社外参謀たちの軌跡と中小企業への思いをお伝えする『社外参謀’s File』をお届けします。第10回目は、税理士の富田晋治。経験から学んだクライアントとの信頼関係の築き方や、中小企業への情熱について語ります。
■直接お客様に貢献したい…手を差し伸べる手段は“税理士×コンサルティング”

大学は工学部に進みましたが、叔父が税理士をしていたことから、就職活動を始める頃に税理士を志しました。叔父からふと「やってみいひんか」と言われて。きっと跡継ぎという部分も意識しての言葉だと思うのですが、その時はなんとなく「面白そうだな」という軽い感覚で決めていました(笑)。
大学卒業後に専門学校に通い、すぐにその学校で講師の仕事に就職。4年経験した後、大阪にある大手税理士法人に勤務しながら、税理士の資格を取得しました。そこでは、初めは財務コンサルタントとして顧客対応を担当。通常、20~30件くらいの担当顧客数が一般的なところ、多い時は60件くらい受け持つこともありました。その後、審理課という、法律など税務的な相談や申告書のチェックをする部門に所属し、最終的にはマネジメントまでおこなっていました。
そもそも、独立への思いはあったのですが、組織で働く中で「そのまま続けて役員を目指した方がいいのかな」という思いもありました。ただ一方で、組織のしがらみやルールに縛られずに、直接お客様と接して貢献したいという独立への思いもあり…。独立するまで結構悩みましたが、やはり最終的には自分でやっていきたいという気持ちが強くなり、開業することに決めました。
現在、税理士事務所とともに、コンサルティングの会社を運営しています。事務所を開業する時には、自分の強みとしてコンサルティングがあった方がいい、と考えていました。基本的に、税理士は税務相談、申告書作成、節税提案などが主な仕事で、売上を上げることはできません。衰退していくお客様がいても、手を差し伸べたくてもどうしたらいいかわからなかったり、アドバイスしてうまくいかなかった時に責任を負いきれなかったりします。それでもなんとか助けたい、と思った時、助けられる手段は「コンサルティングだ」と考えたんです。
ただ、事業計画だけ作って売上には関与しないコンサルではなく、ちゃんと事業としてコンサルティングをおこなっていることを明確にしたかったので、コンサル事業については別会社として立ち上げました。
■大企業ばかりが残る世界は面白くない!知識と経験を活かして頑張っている会社を助けたい
勤めていた税理士法人は、数字に基づいて顧客の業績を上げていこう、という考え方だったので、そこでの経験をコンサル事業に活かすことができました。また、経営コンサルタントの和仁達也さんがおこなっている「キャッシュフローコーチ養成塾」にも参加。そこで講師をしていたJCF代表の石原と出会い、ちょうど「社外参謀養成大学」を開講するタイミングだったことから、一期生として受講しました。
JCFに参画したのは、中小企業の経営に特化したコンサルというのが、税理士の顧客層とマッチした、ということと、やはり五つ星経営フローがとてもわかりやすいので、お客様に伝えやすいなと感じたこと。しかも、結果も出るのは、とてもいいなと思いますよね。
コロナ禍が終わってから特に感じますが、仕入れや人件費などのコストが上がり、小さい会社がどんどんつぶれていっているという現実があります。資本がないと生き残れないような世の中になっているのかなと。でも、大企業ばかり残る世界は、全然面白くないですよね。だから、中小企業が持つ、独自の良さがあるサービスや商品を引き出して、会社を助けたいな、と思います。実は、私の父も自営の運送業をしていて、幼い頃からその姿を見ていました。一番身近なところにいる人ですから、やはり同じような頑張っている会社さんを助けてあげたいな、と思いますね。
■じっくり話を聞いて社長との信頼を築く。その中で、ふと見える“強み”

仕事をする上で、いかにお客様独自の強みを見つけて、それを活かすか、ということを常に意識しています。それまでの経営で得てきた知識やノウハウによって今の会社が存在しているので、絶対その会社それぞれの、他とは違う強みがあるんです。でも、社長は当たり前すぎて、気づいていないんですよね。だから、どんなこだわりがあって、どういう思いで仕事をしているのかなど、じっくりお話を聞きながら、強みを探していきます。
ただ、それでも強みは簡単に見つかるものでもなく、見つかったとしても、社長が求めているものかどうかわかりません。また、お客様の顧客がその強みを必要としているかどうかもやってみないとわからないので、小さく実験してみて、お客様が求めるサービスであればその方向で進めるし、うまくいかなければ再度トライアンドエラーを重ねながら本当の強みを見つけていきます。最終的には、社長が「やりたい」と思うかどうかなので、見つけた強みをどう活かすか、一緒に考えていきます。
例えば以前、近所に競合ができて売り上げが下がってきたと悩まれていた獣医業の顧問先にコンサルに入った時も、経営されている先生のお話を2~3時間以上じっくり伺いました。先生の持っている技術やノウハウ、治療内容やお客様の層などのお話を聞いていると、動物の歯科について、すごく勉強されていて、専門の資格も持っているという話が出てきたんです。競合でそこまでの治療をするのは難しいと聞いて、歯科が強みなのでは、と推測。そして、歯科に特化した専門のサイトや冊子を作って情報発信をしていきました。1~2年ほどかかりましたが、売上を上げることができました。やはりペットが家族化している今、より大事にしたいという飼い主さんの思いから、より専門医を求める傾向にある中で、ニーズが合ったのかなと思います。その先生からは大変感謝していただき「競合に紹介したくない」という言葉を言われました(笑)。教えたくないぐらい喜んでくれたと感じて、とてもうれしかったですね。
コンサルは手法も大事ですが、なによりも、社長の思いをわかってあげることが重要。経営者って本音で気持ちを話せる人がいないことが多いですし、信頼している人でなければ、会社の方針を変えるという大事な話もできません。だから「この人といたら何か変われるかも」と思ってもらえるよう、信頼関係の構築をとても大事にしています。そのためにも、社長の話したいことを聞く、ということを徹底しています。今困っていることや不安なことなど、普通に話を聞いているだけで、ポロッと出てくるんです。具体的に掘り下げていくと、表面的なことではなく、もっと深い部分に不安を持っていることもわかる。すると、話した方は「この人はわかってくれる」と思ってくれるんです。最初はそうやって、信頼関係を築くように心がけています。社長さんの中には、「ここに来ると帰る時には元気になるんですよ」って言われる方もいて(笑)。カウンセリングみたいな感覚に近いかもしれませんね。
■技術やノウハウを伝えて税理士全体の能力を高め、中小企業のサポートを目指したい

これからは、まずはすべてのお客様のビジョンや目標を達成できるよう、サポートしていきたいなという思いがあります。コンサルの契約をしていないお客様には、経営の部分にがっつり入ることはできないので。税理士の仕事の中でも、何かアドバイスやサポートができたらいいなと思いますね。
また、税理士が顧問としてお客様と関わる中で、やはり中小企業を良くしたいと感じている税理士の方って多いと思うんです。だから、私のおこなっている技術やノウハウを伝えたり、税理士自体の能力や知識を高めたりする機会が作れたら、とも思っています。それを通して、多くの中小企業のサポートができれば、効果としてすごく高くなりますし、できたら楽しいな、と思い描いています。
そのためには、まだまだ修業して、目の前のお客様へ結果を出していきます。そこから、伝えていく機会が増えていくのかなと思っています。
<プロフィール>
富田 晋治(とみた・しんじ)
京都府生まれ。関西大学卒業後、専門学校に通った後その専門学校にて講師として4年従事し、大手税理士法人に就職。その後税理士を取得し、2017年に「とみた税理士事務所」を開業。翌年、コンサルティング事業をおこなう「with株式会社」を設立。趣味は競馬で、地方競馬の馬主に登録し、休日は競馬場を訪れることも。